mvp 開発とは
新規のプロダクトをローンチする
MVP開発とは、Minimum Viable Productと呼ばれる、必要最小限の価値を提供するプロダクト(製品)を仮説に基づいて作成・提供し、ユーザーからのフィードバックを元に価値を検証しながらプロダクト開発の改善を繰り返していく開発手法です。一般的なシステム開発の手法とは違います。
小さなプロダクトに改善を加えながら、何度も繰り返し提供していくことでユーザーが求めている価値に近づけていくことが可能です。このため、会社の中で新規事業などで低コストにプロダクトを開発するリーンスタートアップを実現する手法としても、MVP開発は重要視されています。
MVP開発で得られるメリットはいくつかありますが、ムダなく短期間でユーザーが得られる価値を明確にしながら開発を進められることが主な特徴となります。
MVP(実用最小限の製品:Minimum Viable Product)とは、想定するユーザーに対して「コアとなる価値」を提供でき、有効なフィードバックが得られるだけの最小限の機能を持つ製品のことを指します。
仮にローンチしようとしているプロダクトの仮説自体が間違っていた場合、そのプロダクトに十分なコストを投下したとしてもマーケットでの成功は望めないでしょう。もちろんこのお話の前提はマーケティング分析は必須ですが。
MVPでは、仮説に基づいたコアとなる最小限の機能を低コスト・短期間で実装し、それを用いて実際にユーザーからのフィードバックを得ることにより、低リスクかつ早い段階での検証が可能です。
このアプローチにより、仮説が正しいかどうかを早期に実証した上で開発に反映することができることから、リスクを抑えつつ成功確度を高めることが可能となります。
弊社の中国事業所ではもともと長年に渡り中国市場向けアプリ開発を実施しておりますが、急速にビジネスが発展しているために、新規事業の企画案件時には、トライアンドチェックとして活用されるようになった手法で、アリペイや微信といった今や世界を席巻しているプロダクトも当初は最小限の機能だけを実装し、実際のユーザーからのフィードバックを元に改善を継続することで、市場シェアーを獲得して成功をおさめています。
マーケットの変化するスピードが加速し続ける昨今においては、スタートアップ企業はもちろんのこと、リスク軽減とマーケットニーズへの適応しやすさというメリットから大企業でも採用されるケースが増えています。
このようにプロトタイプを簡単に、すぐに開発しながら実験をすることを一般的に「MVP開発」と呼びます。MVPの目的であるコアとなる機能の実装を「最小限のコスト」と「ハイスピード」で実現することが、MVP開発では肝要となります。
MVP開発は実際にユーザーが利用可能なプロダクトを用いなくても、より簡素化された手法を用いて進めることもできます。ここでは、MVP開発の種類を紹介します。
いわゆる試作品や実験機に相当する、実際に動作するプロダクトを用いて検証を行います。使用するデータは検証のために限定されたものを用いて、アウトプットも特定のユースケース(利用シーン)に限定されたものを出力します。このため、複数のユースケースについて検証を行う場合は、それぞれのケースごとにデータや機能を用意する必要があります。
最近ではノーコード、ローコードでの開発を用いて手軽にプロトタイプを作成でき、実際にプロダクトが提供された場合と近い姿で検証を行うことが可能ですが、その反面他の手法と比べると開発コストは大きくなることが想定されます。
スモークテストはユーザーがプロダクトやサービスに興味を持つか検証するために行います。紹介ビデオをユーザーが視聴して興味を持つか、あるいはプロダクト提供前にサイトを作成しユーザーが利用登録を行うかといったように、ユーザーの反応を検証するテスト方法です。オンラインストレージサービスのDropboxはサービスを紹介する動画を用いてスモークテストを行いました。プロダクトの開発をする必要がなく、ユーザーが興味を持っているかすぐに検証できます。
ユーザー価値を検証するために、サイトやプロダクトさえも用意することなくユーザーの意見を収集する方法です。先程の外国人向け宿泊予約アプリを例にすると、空港で外国人を探し紙に印刷された自動翻訳の宿泊施設紹介文を見せ、本当に予約する気になるか、不足している点は無いかなど対面で確認し改善していく方法です。
人力・手動で直接ユーザーの意見を集めるため、間違いの少ない検証結果が得られます。
オズの魔法使いでは、検証のためにプロダクトのフロントエンド(スマートフォンなどの画面側)のみを準備し、バックエンド(画面の入出力処理)を人間が対応して検証する方法です。これも外国人向け宿泊予約アプリを例にしてみましょう。アプリにチャットボットによるQ&A機能が有効かの検証が必要だったとします。この場合アプリからQ&Aの入力は可能ですが、実際にその質問に対応するのはアプリの向こう側で待機している人間です。
人間がシステムの一部を模倣することで、わざわざチャットボットの機能を開発することなく検証を行えるなど、時間をかけずに検証できます。
ランディングページではプロダクトやサービスの説明と、それを利用することでどのような価値や利点があるかを説明したサイトを構築します。そのサイトでは興味のあるユーザーがボタンを押すことで詳細を確認したり、ユーザー登録や商品の購入ができたりするなど、価値に共感するユーザーとの接点を確保できます。
この価値に共感するユーザーにインタビューしたり、フィードバックを受けたりすることで、よりプロダクトの価値を明確できます。
ここからは、MVP開発を有益にするためのポイントを紹介します。
MVP開発はユーザーが求める価値を明確にするための開発手法であり、ユーザーからのフィードバックは必須となります。有益なフィードバックを得るためにユーザーと良好な信頼関係を築くことは有効です。プロダクトの改善された点、改悪してしまった点を本音でコメントしてもらえるユーザーが、プロダクトのファンであり続けてくれるような工夫が必要になります。
また、フィードバックを受ける際の質問も漠然と使用感を尋ねるのではなく、プロダクトが必要となった場面でどのような気持ちで利用したか、改善された機能はその時に有益だったのかなど、より具体的な質問を用意することが大切です。
MVP開発は不明確なユーザー価値を提供するためのプロダクトを、完成を目指して軌道修正しながら進めていくための開発手法です。このため、最初から完璧なプロダクトを提供しようとしても時間を要するばかりで、ユーザー価値の提供に到達できません。場合によってはほとんど利用されない余計な機能を含んでしまう可能性もあります。
たとえプロダクトの機能が不完全な状態であっても、電話や書類の郵送といった目新しくない手段を用いることで機能を補うことが可能であれば、まずはユーザーに提供してみて価値が誤っていないかを見定めることが大切です。従ってデザインやUI設計には大した工数や時間をかけない方がベストです。
MVP開発はどのようなプロダクトの開発にも有効というわけではありません。既存のプロダクトで明確なユーザー価値を提供できているサービスの再構築や、ユーザーに提供する価値がすでに明確になっているプロダクトでは、MVP開発ではなく従来のウォーターフォール型の開発手法が向いています。
MVP開発において重要なのは、必要最小限のコストで素早く仮説を立てられるかどうかです。
事業を一つ発足して成功させるのは非常に難しく、10回のうち1回でも成功すれば御の字だと言われているほど、事業成功までの道のりは遠く険しいものになります。商品やWebサービスを開発してもなかなか成功しないことも珍しくありませんし、失敗してしまったらそれまでにかかったコストや期間は全て無駄になってしまうでしょう。
そんなことがないようにするためにも、事業の仮説が立てやすくなるMVP開発を行うのがおすすめです。
MVP開発であれば必要最小限の機能を搭載してからリリースすればいいので、後はユーザーが求めるニーズに合わせて機能改善を行うだけで済みます。「こんな機能を搭載すればユーザーにとって有益なのではないか?」という仮説を、最小限のコストで立てられるのが大きなポイントです。
もしもユーザーの反応がなければ仮説が間違っていると判断できるので、すぐに別の仮説を立てることができます。一方でユーザーからの反応が大きければ仮説が正しかったということになるため、そのまま機能改善に努めることが可能です。
開発にかけるコストや期間を無駄にすることなく事業推進ができるのが大きなポイントだと言えるでしょう。
MVP開発は事業開発における失敗を少なくするために採用される方法でもあります。
要件定義から詳細設定、開発スケジュール、開発予算などを全て決めた上で長い期間をかけて事業を開発しても、その後のユーザーの反応が少なければ全て無駄になってしまうでしょう。時間とコストをかけたのに失敗するようではモチベーションンの大幅な低下が予想できますし、経営存続の危機に陥るかもしれません。
しかし、MVP開発であれば最小限のコストと時間で製品やサービスをリリースできるため、ユーザーの反応次第でアップデートするかどうかが決められます。
製品開発やWebサービスの配信などで失敗しないようにするには、顧客に合った開発ができるかどうかが重要です。
長い期間や時間をかけて製品開発やWebサービスを配信したのに、ユーザーからの反応がないようでは意味がありません。顧客に合った開発を行うためには、MVP開発によって必要最小限の機能を開発してリリースすれば、ユーザーがどんな反応を示すのか知ることができます。
ユーザーの良い口コミや悪い口コミを確認すれば、顧客が求めている機能を搭載した開発ができるようになります。
アジャイル開発はMVP開発と違い、機能ごとに開発を進めていくのが最大の特徴です。
開発する機能ごとに分かれてそれぞれ開発に取り組み、完成した機能からリリースしていきます。全ての機能を完成させてからではリリースが遅くなってしまうため、優先度が高い機能から優先的にリリースすることで開発にかかる時間を短くすることができます。
アジャイル開発はスムーズに開発できれば開発期間を短縮することができますが、機能ごとにスケジュールを設定する関係上、それぞれの機能の開発状況を把握しにくいというデメリットがあります。
場合によっては一つの機能は開発が終了しているのに、別の機能の開発が終わっていないことも少なくありません。開発の方向性がブレる可能性があることから、開発期間が長くなることも想定する必要性があります。
MVP開発は顧客が本当にその製品を求めているのかが分かるのが大きなメリットです。
製品開発等を行う段階で、顧客が求めていない製品を開発しても意味がありません。真に顧客のニーズを理解しない限り、どれだけ時間やコストをかけても失敗する可能性が高いでしょう。
しかし、MVP開発であれば必要最小限の機能をリリースするだけなので、ユーザーのフィードバックを経て機能改善をしていきます。ユーザーの意見を取り入れてアップデートすることで本当に顧客が求めている開発を進めることが可能です。
M複雑な開発には向いていない
MVP開発は簡単なアイデアを基に開発するのであれば何も問題はありませんが、複雑な開発を行う上で様々な機能を必要とするのには向いていません。開発費用も膨らむ傾向です。
MVP開発は短期間でリリースしてこそ真価を発揮できるため、数ヶ月以上かかるような開発を行う場合は他の方法が良いでしょう。
MVP開発はコストや時間を最小限に抑えることができますが、それができるのはエンジニアのスキルがあってこそです。エンジニアのスキルが高いほどすぐに機能の開発ができるとはいえ、そこまでスキルが伴っていないエンジニアの場合は開発に時間がかかることもあります。
特にエンジニアが不在の環境では、早急に人材を育成するか、新たに人材登用する必要性があるでしょう。
MVP開発は必要最小限の機能を開発してリリースし、ユーザーとのヒアリングやフィードバックを得た上でブラッシュアップさせていくのが目的です。
しかし、ユーザーとのヒアリングやフィードバックによって得られる意見を過剰に取り入れてしまうと、最初のコンセプトからズレたものを開発することになりかねません。あくまでコンセプトからズレない範囲内で開発を行う必要性があるでしょう。
MVP開発の前に仮説検証を立てることの方が重要です。そこに迷ったら世の中には素晴らしいフレームワークがあります。MVPキャンバスは、効果的なMVP検証を実施するため、仮説検証の内容を明確化するフレームワークのこと。
筋の通った仮説を立てずにMVP検証を実施してしまうと、有意義な情報が得られないこともしばしば発生します。MVPキャンバスを活用することで「仮説検証によってどのような結果を得たいのか」「検証を実施するにあたってどのようなMVPを作成するべきか」などの情報を整理し、論理矛盾のない仮説を立てることが可能。効果的で効率的なMVP検証を実施できます。
MMVPは、リーンスタートアップの文脈で生まれた概念です。リーンスタートアップとは、少ないリソースと短い開発期間で必要最低限の機能を実装したサービスやプロダクトを作成し、ユーザー検証のフィードバックを取得して、より満足度の高い製品やサービスを開発するマネジメント手法のこと。
リーンスタートアップの手順を行う前には、新規ビジネスがユーザーニーズにフィットしているかや市場において求められているかなどの要素を押さえておく必要があります。その際、スタートアップの各フェーズにおいて用いられる下記の4つの検証が参考になります。
顧客に課題があるか、課題がある場合はどれだけ深い課題かを検証すること
顧客の課題をサービスによって解決できるかを検証すること
ビジネスや製品・サービスの実現可能性を検証すること
製品・サービスが顧客の課題を解決するために最適な市場に参入しているかを検証すること
MVPキャンバスを構成する10の要素
ターゲットとするユーザーが抱えている本質的なニーズや課題を抽出し、新規ビジネスにおいて最も優先度の高い仮説を記載します。
ここで定義した仮説は、MVPに実装する必要最低限の機能の内容にも直接的に関わります。
MVP検証を実施する目的やゴールを記載します。
明確なゴールを設定せずに検証を実施してしまうと、検証ばかりを繰り返してその後も具体的な開発やリリースといった展開につなげられないといった失敗ケースに陥ってしまいます。
検証方法を具体的に記載します。MVP検証には「プロトタイプ」や「スモークテスト」「コンシェルジュ」「カスタマーリサーチ」「オズの魔法使い」などさまざまな手法があります。
複数の手法が考えられる場合は、それぞれのMVPキャンバスを作成し、最も適切な手法を探しましょう。
仮説検証に必要な条件やデータを記載します。ポイントは、できる限り具体的に条件を設定すること。条件がブレると検証の効果が薄れてしまいます。
ユーザーニーズから抽出した課題をもとにMVPに搭載する必要最低限の機能を定義し、記載します。また、③に記載した検証方法に即した内容になっているかも確認しましょう。
仮説検証に必要なリソースを記載します。原価などの費用面でのコストだけでなく、必要な人員や工数などのリソースも記載しましょう。
仮説検証に必要な期間を記載します。
仮説検証を実施する上で発生することが予測できるリスクを記載します。また、その中から未然に回避できるリスクには回避方法も同時に考えましょう。
仮説検証の結果を記載します。
仮説検証の結果を受けて得られた学びや次に起こすアクションを記載します。
いかがでしたでしょうか。今回の記事は、MVP開発が新規事業の立ち上げに最適な理由や、MVP開発の際の注意点などについて解説しました。
MVP開発は新規サービスを開発する際に非常に役立つ開発手法であり、DX推進にも活用されています。
検証したい仮説を明確にし、最小限の機能を有したサービスを開発し、ユーザーの意見を集めて検証を行うことにより、変化の激しい現在のビジネス市場に有効だと考えます。
しかしながらMVP開発においては注意点があります。MVP開発はあくまで新規事業立ち上げの手段であり、MVP開発そのものが目的になってはいけないということです。変化の激しい時代の中で、新規事業にチャレンジされる時など、このMVP開発がご参考になれば幸いです!当社J&Cカンパニーでは、オフショア開発にてMVP開発をご提案しておりますので、より早く、より費用を抑えて安価に、ビジネス事例を調査しながらご提案しております。